睡眠は記憶力に関係あるの?
睡眠中に記憶が整理され、しっかりと定着していきます。一夜漬けより、きちんと眠ってから覚える方が効果的な理由はここにあります。
睡眠が脳の発達と記憶定着に与える影響
テスト前日、睡眠時間を削って一夜漬けをした経験がある方も多いのではないでしょうか。しかし実は、記憶を定着させるためには、削ってしまったその睡眠こそが重要な役割を果たしています。
眠っている間に脳は記憶を整理している
脳の中では、無数の神経細胞が互いにつながり合って、複雑なネットワークをつくっています。
眠っている間、脳は脳内のつながりを整理し、大切な記憶にあまり関係しないつながりを緩めていることが、研究で報告されています。こうして、必要な記憶が効率よく整理されると考えられているのです。
また、学習や記憶には、使われたつながりが強まったり弱まったりして変化する脳の性質(シナプスの可塑性)が関わっていますが、この変化は睡眠によって促されることがわかっています。そのため、十分な睡眠がとれないと記憶の整理がうまく進まず、学習や記憶の妨げになる可能性があるのです。
記憶の種類によって「担当」する睡眠が違う
私たちは日々膨大な量の情報を認識していますが、そのすべてを記憶しておくことはできません。睡眠中に、覚えておくべき情報とそうでない情報の選別が行われ、日中に学習した記憶が睡眠中に再活性化されることで、記憶の定着が促進されると考えられています。
記憶には、電話番号のように頭で覚える「陳述記憶」、自転車の乗り方のように体で覚える「手続き記憶」、感情を伴う「情動記憶」など、いくつかの種類があります。
興味深いのは、これらの記憶がレム睡眠とノンレム睡眠とで、それぞれ分担して定着されているという点です。陳述記憶や情動記憶は、脳に入った情報がいったん海馬に送られ、必要と判断された情報だけが大脳皮質へと転送されることで定着していきます。

一方、体で覚える手続き記憶は、大脳基底核と小脳で保管されます。恐怖などの情動に関わる記憶は生存にとって重要だと判断されるため、ほかの記憶よりもよく保たれる傾向があり、この情動記憶の増強にはレム睡眠が関わっていると考えられています。
学習後はできるだけ早く眠るのが効果的
効率的に記憶を定着させるためには、学習した直後に睡眠をとったほうが、時間が経ってからの睡眠よりも効果的であることもわかっています。
試験勉強などで睡眠時間を削って一夜漬けをするのは、記憶の定着という観点からは非効率といえます。しっかりと睡眠をとることこそが、勉強や運動の成果を最大限に発揮させるための近道なのです。
この記事のまとめ
睡眠中、脳は日中に得た情報を整理し、必要な記憶を定着させています。記憶の種類によってレム睡眠とノンレム睡眠がそれぞれ役割を担い、学習後にしっかり眠ることが、勉強や運動の成果を高めることにつながります。
参考文献・出典
一般社団法人ブレインヘルスラボ監修『SLEEP PLANNER』PART1「睡眠の基礎知識」第5章4「脳の発達/記憶」
本記事は情報提供を目的としたものであり、診断や治療を目的としたものではありません。
症状や治療については、必ず医療機関にご相談ください。
SUPERVISOR
西野 精治
スタンフォード大学医学部精神科教授。ナルコレプシーの発生メカニズム解明で世界的評価を受ける睡眠研究の権威。ブレインスリープ創業者として、研究の知見を暮らしの中に活かす活動にも取り組んでいる。
WRITING
SLEEP ACTION LAB 編集部
SLEEP ACTION LAB の編集チームです。医師・研究者の監修のもと、睡眠の悩みや疑問、そしてさまざまな人の眠り方を取材し、「眠りを、みんなで考える」ための記事をお届けしています。