不眠とメンタルって関係ある?
不眠と気分の落ち込みは、実はお互いに影響し合っています。心の弱さではなく、まずは眠りを整えることから始めてみましょう。
睡眠不足とうつ・精神疾患の関係
「気分が落ち込みがちなのは自分の心が弱いから」——そう考えてしまう方は少なくありませんが、実は不眠と精神的な不調は、お互いに影響を与え合う関係にあることがわかっています。うつ病の患者さんには不眠が症状の一つとして現れますが、逆に不眠そのものがうつ病発症の危険性を4倍高めるともいわれており、不眠がうつ病のきっかけになる可能性も考えられているのです。
不眠がある人はうつ病リスクが高まる
20歳以上を対象としたある調査では、睡眠の質の悪さや寝つきの悪さ、睡眠困難、睡眠薬の使用、日中の眠気などの不眠の症状を自覚している人は、自覚していない人と比べて、2年後にうつ病を発症するリスクが高くなっていました。
また、睡眠時間が6時間以下の場合、睡眠時間が短くなるほどうつ症状が悪化するという報告もあります。一方で睡眠時間が8時間以上でも、うつ病発症のリスクが高まるという結果が出ており、「短すぎても長すぎてもよくない」という点は、これまでの他のリスクと共通しています。
さらに65歳以上で寝つきの悪い方は、3年後にうつ症状が生じる確率が非常に高くなるという報告もあります。不眠があると、うつ病だけでなく、不安神経症やアルコール依存、薬物依存のリスクも高くなることが、これまでの研究から広く知られています。
「社会的時差ボケ」がメンタルに与える影響
海外渡航による時差ボケだけでなく、シフト勤務や、平日と休日の睡眠時間の差によっても、体内時計と社会生活の時間にズレが生じることがあります。
これを「社会的時差ボケ」と呼びます。「社会的時差ボケ」が大きくなるほど、精神的な健康を阻害する可能性が指摘されています。
眠らないと感情が不安定になる
睡眠不足になると、感情が不安定になりやすいことが研究によって明らかになっています。数日間にわたり睡眠不足の状態をつくり出した実験では、脳の中で感情を司る扁桃体が、ネガティブな刺激に対して過剰に反応するようになりました。一方で、幸せを感じるような刺激への反応には変化が見られませんでした。この背景には、感情の暴走にブレーキをかける脳の部位と扁桃体との連携が弱まってしまうことが関係していると考えられています。
「気分が沈みがち」「なんだかイライラしやすい」と感じたとき、それは心の弱さではなく、眠りが乱れているサインかもしれません。メンタルの不調を感じたときこそ、まずは睡眠のリズムを整えることから見直してみることをおすすめします。
この記事のまとめ
不眠とメンタルの不調は互いに影響し合い、不眠が続くとうつ病の発症リスクや感情の不安定さにつながることがあります。睡眠時間だけでなく、生活リズムを整え、質のよい睡眠をとることが心の健康にも大切です。
参考文献・出典
- 一般社団法人ブレインヘルスラボ監修『SLEEP PLANNER』PART1「睡眠の基礎知識」第2章5「精神疾患」
本記事は情報提供を目的としたものであり、診断や治療を目的としたものではありません。
症状や治療については、必ず医療機関にご相談ください。
SUPERVISOR
西野 精治
スタンフォード大学医学部精神科教授。ナルコレプシーの発生メカニズム解明で世界的評価を受ける睡眠研究の権威。ブレインスリープ創業者として、研究の知見を暮らしの中に活かす活動にも取り組んでいる。
WRITING
SLEEP ACTION LAB 編集部
SLEEP ACTION LAB の編集チームです。医師・研究者の監修のもと、睡眠の悩みや疑問、そしてさまざまな人の眠り方を取材し、「眠りを、みんなで考える」ための記事をお届けしています。