睡眠はがんのリスクにも関係するの?
体内時計の乱れが発がんリスクと関連することが指摘されています。夜更かしが続いている方は、少しずつ生活リズムを整えていきましょう。
睡眠不足とがんリスクの関係を医師が解説
睡眠とがんの関連については、これまでに多くの研究が行われています。睡眠不足になると、がんと闘ってくれる免疫細胞が減少し、免疫機能を高める遺伝子の働き弱まってしまいます。反対に、がんを促進するような慢性炎症や細胞ストレス、血管をつくる働きに関わる遺伝子は活性になりやすくなります。
実は、健康な人の体内でも、がんになりやすい異型細胞は一定の頻度でつくられていますが、正常な免疫の働きによってきちんと除去されています。つまり、免疫機能が弱まれば弱まるほど、がんの発症リスクは高くなってしまうのです。
動物実験でわかった睡眠不足とがん細胞の関係
睡眠不足にした動物を使った実験では、がん細胞がより増殖しやすくなることが確認されています。本来であれば、がん細胞を攻撃するはずの免疫細胞が、睡眠不足の状態では十分に力を発揮できず、結果としてがん細胞の増殖を許しやすくなる可能性が指摘されています。
睡眠時間とがんの発症リスク
睡眠時間と乳がんの発症リスクとの関係を調べたある調査では、平均睡眠時間が6時間以下の人は、7時間の人と比較して乳がんの発症リスクが約1.6倍高くなったと報告されています。
また前立腺がんについては、睡眠時間が長いほど発症リスクが低いという結果が出ています。男性を対象にしたある調査では、睡眠時間6時間以下・7〜8時間・9時間以上の3つのグループで比較したところ、6時間以下のグループでは前立腺がんの発症率が高く、9時間以上のグループでは発症率が半分以下だったこともわかっています。加えて、発症した人の平均年齢にも違いがあり、睡眠時間が長いグループでは発症時の年齢が高めだったのに対し、短い睡眠のグループではより若い年齢での発症が目立っていました。乳がん・前立腺がんに限らず、睡眠時間が短いことは、がんの発症リスクを高める可能性がある要因の一つといえます。

夜更かしの習慣が続くと、体内時計(サーカディアンリズム)が乱れやすくなり、これが免疫機能の低下と結びついてがんリスクに影響する可能性があります。日々のちょっとした夜更かしの積み重ねが、将来の健康リスクにつながるかもしれないと考えると、規則正しい睡眠時間を確保することの大切さが見えてきます。
この記事のまとめ
睡眠不足や体内時計の乱れは、免疫機能の低下などを通じて、がんの発症リスクと関連する可能性が指摘されています。十分な睡眠を確保し、夜更かしを避けて規則正しい生活リズムを保つことが大切です。
参考文献・出典
一般社団法人ブレインヘルスラボ監修『SLEEP PLANNER』PART1「睡眠の基礎知識」第2章4「がん」
本記事は情報提供を目的としたものであり、診断や治療を目的としたものではありません。
症状や治療については、必ず医療機関にご相談ください。
SUPERVISOR
西野 精治
スタンフォード大学医学部精神科教授。ナルコレプシーの発生メカニズム解明で世界的評価を受ける睡眠研究の権威。ブレインスリープ創業者として、研究の知見を暮らしの中に活かす活動にも取り組んでいる。
WRITING
SLEEP ACTION LAB 編集部
SLEEP ACTION LAB の編集チームです。医師・研究者の監修のもと、睡眠の悩みや疑問、そしてさまざまな人の眠り方を取材し、「眠りを、みんなで考える」ための記事をお届けしています。