寝ている間に体の中で何が起きているの?
眠っている間には成長ホルモンなど、体の修復に関わるホルモンがしっかり分泌されています。「寝る子は育つ」ということわざは、医学的にも理にかなっているんですよ。
睡眠中に分泌されるホルモンとその役割
「寝る子は育つ」ということわざを、単なる言い伝えだと思っている方も多いかもしれません。しかし実際に、私たちが眠っている間には、体を成長させたり修復したりするホルモンがしっかりと分泌されていることがわかっています。ホルモンとは、血圧や血糖値など体の働きを調整するために細胞から分泌される物質で、人の体には100種類以上存在するといわれています。ホルモンの分泌にも1日周期のサーカディアンリズムがあり、睡眠中に多く分泌されるものと、覚醒時のみ分泌されるものがあります。睡眠関連のホルモンとして代表的なものが、成長ホルモン・メラトニン・コルチゾールの3つです。
成長ホルモン:体の修復を担う「アンチエイジングホルモン」
成長ホルモンは睡眠中に分泌され、骨や筋肉といった体の成長だけでなく、細胞の修復などの機能も担っているため、「アンチエイジングホルモン」とも呼ばれています。この成長ホルモンは、睡眠の初期段階で多く分泌されることが知られており、実に70〜80%が睡眠の初期段階で分泌されます。特に、入眠初期に現れる深いノンレム睡眠と密接に関連しており、この段階の眠りが深いほど、成長ホルモンの分泌量も多くなります。つまり、就寝時刻そのものよりも、「入眠後にどれだけ深く眠れているか」が、成長ホルモンの分泌量を左右するということです。

メラトニン:眠りへの入り口をつくる「睡眠ホルモン」
睡眠を促進する代表的なホルモンが、メラトニンです。脳の松果体という部分から分泌され、血中のメラトニン濃度が上昇すると深部体温が下がり、眠るための準備が体の中で整えられていきます。メラトニンは必須アミノ酸であるトリプトファンから、これが体内でセロトニンに変わり、さらにメラトニンへと合成されます。トリプトファンは豆類や肉などの食品に含まれる栄養素で、メラトニンをしっかり合成するためには、日々の食事でトリプトファンを不足させないことも大切です。 朝、目が覚めて太陽の光が目に入ると、その光の情報は脳の視交叉上核というサーカディアンリズムを司る部位に届き、そこから松果体へと伝えられます。松果体では、最初に光を浴びてからおよそ13〜15時間後に、メラトニンの分泌が促進される仕組みになっています。つまり朝7時に光を浴びた場合は、夜20〜22時頃にかけて自然と眠くなる準備が始まるということです。 メラトニンには、約24時間の体内リズムであるサーカディアンリズムを整える役割もあります。通常、朝にしっかりと光を浴びていれば、夜間にはきちんとメラトニンが分泌されます。ところが、メラトニンの分泌準備が整った段階で強い光を浴びてしまうと、分泌そのものが抑制されてしまうという特徴があるのです。夜に強い光を浴びると、メラトニンの分泌タイミングが後ろにずれてしまい、結果としてスムーズな寝つきが得られなくなります。特に、スマートフォンやパソコンの画面などに含まれる波長の短いブルーライトは、メラトニンの分泌を抑制する効果が強いといわれています。日中に浴びる分には問題ありませんが、よい睡眠のためには、就寝前にはできるだけブルーライトを浴びないよう心がけることが大切です。

近年では、こうしたメラトニンの働きに着目したメラトニンサプリメントも数多く販売されるようになりました。特にアメリカなど海外では、メラトニンそのものを配合したサプリメントが一般的な健康食品として広く流通しています。一方、日本ではメラトニンは医薬品成分として扱われており、成分そのものを配合したサプリメントを国内で購入することは基本的にできず、個人輸入によって入手されているのが実情です。そのため、国内で販売されている多くの「睡眠サプリ」は、メラトニンの原料となるトリプトファンや、リラックスを促すGABA、ラフマ由来成分などを配合し、体内でのメラトニン合成やリラックスをサポートする形をとっているものが中心です。[素江1.1][有渡1.2]サプリメントを活用する場合も、まずはこうした違いを理解し、体質や持病、服用中の薬との相互作用が気になる場合は医師に相談したうえで取り入れることが望ましいでしょう。
コルチゾール:目覚めを後押しする覚醒ホルモン
覚醒に関連するホルモンとしては、コルチゾールが知られています。コルチゾールは活動性のホルモンで、朝になるにつれて分泌が増加し、体温を上昇させることで覚醒を促し、1日のリズムを整える働きをしています。通常、コルチゾールは睡眠の後半である明け方にかけて増加し始め、日中に分泌が盛んになり、夜になると再び減少していきます。炎症を抑えたり、代謝を調節したり、体がストレスに対応できるようにしたりと、さまざまな役割を担っていますが、過剰なストレスによっても分泌されるため、日常的に強いストレスを感じ続けていると、コルチゾールが慢性的に増えてしまい、体のリズムが乱れる原因にもなります。
この記事のまとめ
睡眠中も、私たちの体ではさまざまなホルモンが働いています。入眠後の深い眠りで多く分泌され、体の成長や修復を担う「成長ホルモン」、夜に増えて眠りを促す「メラトニン」、明け方から増えて目覚めを後押しする「コルチゾール」。これらが1日のリズムに合わせて働き、睡眠と覚醒を支えています。
参考文献・出典
一般社団法人ブレインヘルスラボ監修『SLEEP PLANNER』PART1「睡眠の基礎知識」第5章3「ホルモン」
本記事は情報提供を目的としたものであり、診断や治療を目的としたものではありません。
症状や治療については、必ず医療機関にご相談ください。
SUPERVISOR
丸山 崇
WRITING
SLEEP ACTION LAB 編集部
SLEEP ACTION LAB の編集チームです。医師・研究者の監修のもと、睡眠の悩みや疑問、そしてさまざまな人の眠り方を取材し、「眠りを、みんなで考える」ための記事をお届けしています。