睡眠不足は生活習慣病と関係あるの?
睡眠不足は高血圧や糖尿病などのリスクを高めることがわかっています。数値が気になる方こそ、まずは睡眠を見直すのも一つの解決策かもしれません。
睡眠不足が招く生活習慣病リスク
「食事にも運動にも気をつけているのに、健康診断の数値がなかなか改善しない」——そんな方が見落としがちなのが、睡眠です。慢性的な睡眠不足が積み重なった「睡眠負債」の状態は、糖尿病や高血圧をはじめとする生活習慣病のリスクを上昇させることが知られています。ここでは、代表的な4つの病気と睡眠との関係を見ていきましょう。
糖尿病:ホルモンの乱れと血糖コントロールの乱れ
睡眠不足になると、食欲に関わるホルモンの分泌に異常が生じ、過食や肥満につながりやすくなります。さらに、肥満によって起こる体内の軽い炎症が、血糖値を下げるインスリンというホルモンの働きを鈍らせてしまい、これが糖尿病の一因になると考えられています。
興味深いのは、糖尿病のリスクは「眠らなすぎ」だけでなく「眠りすぎ」でも高まるという点です。
もっともリスクが低いのは7〜8時間睡眠で、短すぎても長すぎても糖尿病のリスクは上がる傾向があります。
動物実験でも、慢性的に眠れない状態が続くと、血糖を処理する能力に異常が現れ、脂肪細胞にも炎症が見られるようになったという報告があり、短時間・長時間睡眠と糖尿病リスクの関係は、体の仕組みの面からも裏付けられつつあります。
高血圧:交感神経が休まらない夜
高血圧のリスクは、主に「睡眠不足」の場合に高まることが報告されています。
通常、私たちが眠っている間はリラックスを司る副交感神経が優位になり、興奮を司る交感神経の働きは抑えられます。
ところが睡眠時間が短いと、この交感神経が興奮した状態が続いてしまい、本来なら下がるはずの血圧が十分に下がらなくなってしまうのです。
とくに深い眠り(ノンレム睡眠)の最中は血圧が下がるのが通常ですが、すでに高血圧気味の人ではこの低下がうまく起こらなかったり、逆に血圧が上がってしまったりするケースも見られます。高血圧が進行すると、血管の壁が硬くなる動脈硬化を招き、これが次にお話しする脳卒中や心疾患のリスクにも直結していきます。
脳血管疾患(脳卒中):眠りすぎにも要注意
睡眠不足による高血圧は、そのまま脳卒中(脳出血・脳梗塞の総称)のリスクにもつながります。
睡眠時間が5時間以下になると脳卒中のリスクが高くなるという報告がある一方、実は睡眠時間が長すぎる場合にも脳卒中リスクが上がることが知られています。
ある調査では、9時間以上眠る人は7〜8時間眠る人と比べて脳卒中のリスクが2割以上高くなり、さらに昼寝の時間が90分を超える人は、30分未満の人と比べて同様にリスクが2割以上高くなったという結果も出ています。
「よく眠れているから安心」ではなく、長すぎる睡眠や長い昼寝もサインの一つと捉えることが大切です。また、いびきや呼吸停止を伴う睡眠関連の呼吸障害も、脳卒中の大きなリスク要因として知られています。実際、脳卒中を発症した患者さんの半数以上に、こうした睡眠時の呼吸の異常が見られたという報告もあるほどです。

虚血性心疾患:心筋梗塞・狭心症のリスクも
心臓に栄養を送る血管が細くなったり詰まったりすることで起こる心筋梗塞や狭心症も、睡眠と無関係ではありません。日本で行われた研究では、1日4時間以下しか眠らない女性は、7時間睡眠の女性と比べて心疾患による死亡リスクが2倍以上に高まったという結果が出ています。これは短時間睡眠によって動脈硬化が進みやすくなることや、交感神経の興奮状態が続くことで血管が収縮し、心臓に十分な血液が届きにくくなることが関係していると考えられています。一方で、10時間以上の長時間睡眠でも、7時間睡眠に比べてリスクが1.5倍以上高まるという結果が報告されており、こちらも「眠りすぎ」への注意が必要なポイントです。
このように、睡眠不足(そして睡眠のとりすぎ)は、糖尿病・高血圧・脳卒中・心疾患といった生活習慣病のリスクにそれぞれ異なるメカニズムで関わっています。共通しているのは、「7〜8時間前後の睡眠」がもっともリスクの低いゾーンになりやすいという点です。食事や運動の習慣を見直すのと同じように、睡眠時間そのものを健康管理の指標に加えてみることをおすすめします。
この記事のまとめ
睡眠不足は、糖尿病や高血圧、脳卒中、心疾患などの生活習慣病リスクと深く関係しています。睡眠時間が短すぎるだけでなく、長すぎる場合にも注意が必要です。食事や運動とともに、睡眠を整えることも健康管理の基本です。
参考文献・出典
一般社団法人ブレインヘルスラボ監修『SLEEP PLANNER』PART1「睡眠の基礎知識」第2章2「生活習慣病」
本記事は情報提供を目的としたものであり、診断や治療を目的としたものではありません。
症状や治療については、必ず医療機関にご相談ください。
SUPERVISOR
丸山 崇
WRITING
SLEEP ACTION LAB 編集部
SLEEP ACTION LAB の編集チームです。医師・研究者の監修のもと、睡眠の悩みや疑問、そしてさまざまな人の眠り方を取材し、「眠りを、みんなで考える」ための記事をお届けしています。